耳閉感とは？

「耳がふさがったように感じる」

「自分の声が響く」

「圧が抜けない」などの不快感を指します。

さまざまな原因で耳と鼻をつなぐ耳管の働きが乱れたり、耳周辺の循環バランスが崩れることで起こります。

 

耳閉感の原因

耳の「詰まった感じ（耳閉感）」は、耳そのものの問題だけでなく、周囲の筋肉や自律神経の乱れなど、複数の要因が関わることがあります。

まず耳鼻科領域では、鼻炎や副鼻腔炎、アレルギー、風邪の後などにみられる耳管機能不全が代表的です。耳と鼻をつなぐ耳管の働きが低下し、中耳の圧が調整できず、こもるような感覚が生じます。また、中耳炎や滲出性中耳炎では炎症や貯留液によって圧が抜けにくくなることで耳閉感が出ます。外耳道の耳垢の詰まりや、湿疹・腫れでも音の通りが妨げられ似た症状を起こします。さらに、メニエール病・片頭痛・突発性難聴などの内耳疾患、飛行機や潜水などによる気圧差の影響（気圧外傷）、そして自身の声が響きやすくなる耳管開放症も原因となります。

 

次に、耳の周辺の筋骨格・顎関節の影響も見逃せません。首肩のこりや猫背、食いしばり・顎関節症により、側頭部〜耳周囲の筋緊張が強まると、耳閉感や耳の圧迫感につながることがあります。

 

さらに、自律神経やホルモンの影響も関係します。ストレスや睡眠不足、更年期、月経周期、妊娠期の鼻づまりなどは、耳管の働きに影響し、耳が詰まったように感じる原因になります。

このように耳閉感は、耳そのものだけではなく、全身の状態や姿勢・筋緊張、ホルモンバランス、自律神経の影響など、多角的に考えることが重要です。

耳閉感の東洋医学的な考え方

東洋医学では、耳は「腎」と深く関わり、さらに「肝」や「脾」の影響も受けると考えます。耳が詰まったように感じる耳閉感は、体質やストレス、生活リズムなどにより、いくつかのタイプ（証）に分類して捉え、施術を行います。

◯肝気鬱結／肝陽上亢
ストレス・緊張・睡眠不足などで「気」が上に偏りやすくなり、頭部の循環が乱れます。その結果、耳のこもり感や耳鳴りが出やすくなります。

◯痰湿
水分代謝が低下し、余分な水分（痰濁）が体内に停滞している状態です。鼻炎やむくみ体質の方に多く、重だるさや頭のしめつけ感を伴いながら耳が詰まるケースがみられます。

◯腎虚
慢性的な疲労や加齢などで「腎精」が不足し、耳への栄養が十分に届かない状態です。耳閉感に加え、聞こえのムラやふらつきを伴うことがあります。

耳閉感に対する当院の施術

耳閉感は、内耳や耳管の炎症や浮腫、首肩のこり、自律神経の乱れなどが複合して起こることが多い症状です。
当院では、自律神経の調整・血行促進・炎症・浮腫の軽減を中心に、鍼灸で自然治癒力を高めていきます。

◯耳鼻科的アプローチ

首・肩・背中・顎・頭の筋緊張をゆるめて頭頸部の血流を改善し、耳周囲へ微弱な鍼通電で耳管の動きや内耳の循環をサポートします。花粉症や鼻炎が背景にある場合は、鼻の通りやすさを意識した施術も併用していきます。

◯（関連する場合）婦人科的背景への配慮

生理前後や更年期でホルモンバランスが乱れやすい時期は、自律神経の乱れやむくみ体質が耳閉感に影響することがあります。腹部や下肢のツボで自律神経と血行促進を促し、全身から整えます。

 

耳閉感に対する鍼灸施術の一例

50代女性。

5年以上前から続く耳閉感があり、特に3年前から症状が強くなったため耳鼻科を受診されましたが、改善が難しいと説明を受けられていました。

この方は遠方への出張が多く、仕事上のストレスや考えごとが多い環境で、自律神経の乱れがみられる状態でした。また、首・肩・背中の強い張りと頭部のむくみがあり、耳周辺の循環にも影響が出ていると考えられました。

施術では、首・肩・背中の緊張をゆるめるツボ、頭部のむくみを軽減するツボ、耳周囲の血行を促すツボを組み合わせ、自律神経の調整を目的に鍼灸を行いました。

5回目の頃には耳閉感が軽くなり、7回目には日常生活でほとんど気にならない程度に。その後は大きなストレスがなければ症状が出にくくなり、現在は耳以外の体調管理も含めて定期的にメンテナンスを継続されています。

最後に

耳閉感は「検査では異常なし」と言われる一方で、不快感が続きやすい症状です。当院は自律神経の調整・血行促進・炎症や浮腫を抑える鍼灸と、首・肩・背中・顎を含めた全身調整で、自然治癒力が働きやすい土台づくりを行います。
「薬だけに頼らず体質から整えたい」「再発しにくい状態を目指したい」方は、お気軽にご相談ください。

 

【執筆者】
三茶はりきゅう院　稲垣（副院長）

東急田園都市線・世田谷線「三軒茶屋駅」徒歩3分
平日20:30まで受付、土日祝も営業
完全個室の施術室